今年最大級のIPOと注目されるクラーナ

  • 2021年6月7日
  • 2021年6月7日
  • BS余話

「今すぐ買って後で払う」BNPL(buy-now-pay-later)企業の草分けとして知られるクラーナの上場が近いのではないかと注目されています。

クラーナはスウェーデンの銀行で、オンラインショッピングをより安全で簡単にすることを目的として2005年にスタートしました。以来、同社は進化を続けており、顧客に柔軟な支払いソリューションを提供しています。これには、配達後に支払うオプションや分割払いプランなどが含まれ、現在ではBuy Now, Pay Laterとして知られています。

クラーナは、全世界で9,000万人のアクティブな顧客にサービスを提供しており、17カ国の250,000の小売店と提携しています。同社は、商品が届いてから30日後に支払いを済ませることで、顧客が商品を試して返品するかどうかを判断できる「ペイイン30」というオプションで知られています。

クラーナは、特に米国市場に焦点を当てて、急速に浸透を図っています。今年の第1四半期末までの米国の顧客数は1,700万人と、前年の2倍になり、現在、米国の大手小売企業トップ100社のうち4分の1と提携しています。

同社は、アファームやアフターペイといった他のBNPL企業と直接競合しています。アファームは1月に上場した米国のBNPL企業で、6月4日の終値で時価総額は約160億ドル、オーストラリアのアフターペイの時価総額は約210億ドルとなっています。

これらのBNPL企業は、市場シェアを失うことを嫌う既存企業との競争に直面しています。初期のインターネット決済企業の1つであるペイパルは、昨年の夏に「Pay in Four」という商品を導入し、6週間かけて4回の無利息支払いを可能にしました。

ビザもまたBNPLのトレンドに乗ろうとしている企業の1つで、すでにクレジットカードを持っている顧客に支払いのオプションを提供したいと考えています。クラーナ、アファーム、アフターペイといった新興企業がビジネスを脅かしているだけに、伝統ある企業も防戦に懸命です。

クラーナの最近の資金調達ラウンドにはソフトバンクなどが参加しており、その評価額は400億ドルから500億ドルになっています。この評価額は、ヨーロッパで最も価値のあるスタートアップ企業のひとつであることを示し、スウェーデン最大の金融会社となり、ドイツ銀行やクレディ・スイス・グループなど、ヨーロッパの大手銀行よりも大きな存在にクラーナがなったことを意味します。

同社は、過去2回の資金調達ラウンドで評価額が急上昇しました。9月の資金調達ラウンドでは110億ドル、3月の資金調達ラウンドでは310億ドルの評価額に達しました。現在、評価額は500億ドル近くに達しており、投資家たちは、今年最大級の新規株式公開(IPO)になるかもしれないと期待を寄せています。

関係者がロイターに語ったところによると、今回の最新の資金調達ラウンドは、クラーナにとって株式公開前の最後のラウンドになるそうです。同社はロンドンでの上場を検討していましたが、規制上の問題からニューヨークでの上場に踏み切る可能性もあります。

銀行関係者は、同社がIPOまたはSPAC(特別目的買収会社)との合併を行うと予想していますが、CEOのSebastian Siemiatkowski氏は、SPACの可能性は極めて低いと述べています。

その代わりに、直接上場するのではないかという憶測もあります。従来のIPOでは、企業は資金調達のために、引受人を雇い、IPO価格を設定し、どれだけの株式を販売するかを決定します。

直接上場とは、引受人を使わず、新たな資金調達をせずに、企業が直接株式を公開することです。クラーナはすでに複数の資金調達ラウンドで資金を調達しているため、直接上場の方が有利になる可能性があります。

投資家はクラーナの上場を待ち望んでいます。早ければ年内にも完了するでしょうが、2022年にずれ込む可能性もあります。BNPLの分野は競争が激しいだけに、今後数年間でどのような展開を見せるかが注目されます。

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