米通信大手AT&Tは17日、傘下のメディア事業「ワーナーメディア」を分割し、メディア大手ディスカバリーと統合して新会社を設立すると発表した。メディア報道によると、新会社の企業価値は1500億ドル（約16兆円）に上る。メディア業界の主戦場となったストリーミング市場で先行する米ネットフリックスと米ウォルト・ディズニーに次ぐ「第三極」を目指す。
新会社はディスカバリーのデビット・ザスラフ最高経営責任者（CEO）が率いる。AT&Tが株式の71%、ディスカバリーが29%を持つ。当局の審査などを経て、2022年半ばの手続き完了を目指す。今回の再編に伴いAT&Tが受け取る総額は430億ドルとなる。＜中略＞
米国の消費者の間では、高額なケーブルテレビ契約を解除し、安価なストリーミングサービスに切り替える「コードカット」と呼ばれる流れが続く。ワーナーメディア、ディスカバリーともに新しい消費者の志向に合わせた戦略転換を迫られていた。
日本経済新聞2021年5月18日電子版
ディスカバリー（DISCA）とAT&T（T)のワーナーメディアとの合併は、今日のメディア業界の状況において、規模の大きさの価値を明確に示しています。
ディスカバリーは、欧州全域をカバーするテレビスポーツネットワーク “Eurosport “や欧州で放送されているチャンネルのポートフォリオにより、グローバルな事業展開を行っています。
AT&Tの最高経営責任者であるジョン・スタンキー氏は、5月17日朝に行われたプレスコールで、「消費者に直接提供されるストリーミングサービスの機会は急速に拡大しており、そのペースに遅れず、リーダーとしての地位を維持するためには、グローバルな規模、資本へのアクセス、幅広い高品質のコンテンツ、業界最高の人材など、いくつかの要素が必要である」と述べました。
来週までに名前が発表される新会社は、20万時間以上の番組を有し、HBO、アニマルプラネット、CNN、フードネットワークなど100のブランドを含む予定です。HBO MaxやDiscovery+などのストリーミングサービスも含まれる予定で、成長はしているものの、ネットフリックスやディズニー＋に比べると、まだかなり規模が小さいものです。
HBOとHBO Maxの全世界の加入者数は6,390万人。ディスカバリー社のストリーミングサービスの全世界における加入者数は1,500万人で、そのほとんどがDiscovery+の加入者です。これに対し、ディズニー＋は1億360万人、ネットフリックスは2億760万人となっています。
2022年半ばに買収が完了すれば、ディスカバリーのグローバルな事業展開は、ワーナーメディアの国際的な事業展開に役立ちます。HBO Maxは、6月にラテンアメリカとカリブ海の30の地域で開始され、今年の後半にはヨーロッパの21の市場で展開される予定です。
ワーナーメディアは、ターナースポーツを通じて、メジャーリーグベースボール、ナショナルバスケットボールアソシエーション、ナショナルホッケーリーグ、N.C.A.A.との契約をはじめ、数多くの米国のテレビ配信権を有しています。ディスカバリーは、ヨーロッパで2024年までのオリンピックの放送権などを持っています。
もうひとつのチャンスはニュースで、ディスカバリーは最近、英国の保守派チャンネルであるGBニュースに投資したと同社のザスラフCEOは述べています。ザスラブCEOは、同社がCNNの長期的なオーナーになるつもりであると述べ、さらにグローバルな展開を示唆し、ディスカバリーのポーランドでのニュース事業にも言及ししています。
「双方の消費者への直接販売の勢いは、我々が世界のトップストリーミング企業のひとつになることを加速させるだろう」と同氏は述べています。