レモネード(LMND)が5月11日に発表した第1四半期の決算。先週最後に少し持ち直しましたが、決算発表直後に16.5%減と暴落するなど株価のさらなる低迷をもたらしました。
失望売りの原因となったのが、予想より多額の純損失4,900万ドル(調整後のEBITDAでは4,130万ドルの損失)を計上したこと。これは主に今年2月にテキサス州を襲った「ウリ」と名付けられらた寒波、冬の嵐によるものでした。
記録的な寒波とアイスストームであったウリの発生からわずか数日で、レモネードは同社にとって1年分の請求を受けたそうです。同社のAIベースの保険金支払いプラットフォームが大活躍してこの支払い請求に対応し、顧客からネットプロモータースコア70という評価を受けたことを経営陣は誇らしげに報告しています。
この70という評価は、「ほとんどの人がレモネードに満足し、他の人にも保険会社を紹介してくれた」レベルであったこと示すもので、ウリという冬の嵐の中でのネット・プロモーター・スコア70は、平常時のレモネードのスコアとほぼ同じであり、多額の保険金支払いの負担が増えても、レモネードのサービスが損なわれることはなかったことを示すものなのだそうです。
そうは言っても気になるのは、キャッシュアウトの割合が高くなったことです。第1四半期の総損害率(保険業界の指標で、保険金の支払額を総収入保険料で割ったもの)は121%となり、レモネードが支払った保険金の額が保険料収入で得た額を上回ったことになります。2020年第4四半期の総損害率は73%、2020年第1四半期の総損害率は72%でした。今回もウリを除いた場合の総損害率は71%でした。
損失は大きくなったものの、劇的な額というまでのものではありませんでした。調整後のEBITDAで4,130万ドルの損失は、数ヶ月前に経営陣が発表した4,000万ドルから4,300万ドルの損失というガイダンスに沿ったものでした。
レモネードは、昨年から再保険に大きく依存しており(災害時の損失を抑えるために、他の保険会社から保険契約を購入すること)、そのことがウリによる損失を低く抑えたと言えます。
2020年第4四半期の純損失および調整後EBITDA損失は、それぞれ3,390万ドル、2,970万ドルという額であったことと比べても、ウリの被害がそれほど大きなものではなかったことがわかります。
保険業界のディスラプターと期待されるレモネードにとって重要なのは、いかに早く新規顧客を増やし、保有保険料を増やしていくかということですが、同社はしっかりとした数字を残しました。
3月末の総顧客数は110万人弱(前年同期比50%増)、保有保険料は2億5,200万ドル(89%増)、顧客1人当たりの保険料は229ドル(25%増)となり、レモネードは成長を続けています。
拡大を最大化するために多額の支出を行っているためレモネードの採算はとれておらず、赤字基調が続いています。ウリのような災害が今後も起こることも予想されますが、それでも耐えて行けるでしょうか。
当面の間、レモネードには販売・マーケティング費用や、新製品(今年末に予定されている自動車保険ラインなど)の立ち上げ費用をカバーするための十分な現金があります。
3月末時点で、レモネードは10億3,000万ドルの使途不指定の現金および同等物を保有していました。これは、2021年第1四半期のキャッシュアウトフローの割合で考えると、5年分以上の損失をカバーするのに十分な額です。すぐに資金不足に陥るようなリスクはないと考えられます。
規模を拡大し成長するに連れ、損失は縮小するはずです。2021年第1四半期に、新しい顧客や契約の追加という点でレモネードは堅実な進歩を遂げており、同社の将来に期待して中長期的な観点から保有する投資家にとっては現在の赤字レベルは許容できる範囲だと思われます。