3月16日の日経電子記事版に「米生保販売、コロナで勢い」のタイトルで興味深い記事が載っていました。記事の中で言及されていたのは以下のような調査結果です。
米生保会社審査情報センター(MIB)によると、米国の生命保険の申込件数は2020年、前年比で4%増えた。比較できる11年以降で最大の増加率で、11年=100とした件数の水準自体も20年は102.8で最高だった。0~44歳の契約が20年は前年比8%増と急伸し、60歳以上は2%減だった。
調査会社のリムラによると、米国での生命保険加入率は20年9月時点で成人で54%だ。世帯加入率で約9割の日本と比べて低い。
保険情報機構によると米国では販売員を介さずオンラインなどで直接購入する割合は19年に6%で、9割は販売員を経て購入している。販売員を介する中には電話など対面ではないケースも含まれるが、保険はローンや送金に比べてデジタル化が進んでいなかった。アクセンチュアによると保険会社のデジタル化に満足と答えた客は15%にすぎなかった。
リムラによると保険のオンライン販売を好む消費者は11年に17%だったが20年には29%に増えた。
米連邦準備理事会(FRB)が23年までゼロ金利政策を続けると明言するなかで事業環境は厳しく、大手保険会社では生命保険事業を売却したり、事業を分離する動きも出ています。
デジタルを駆使して顧客を囲い込むか、手放すか、米国の生保業界を巡る勢力図は大きく変わりそうだ。
と日経の記事は結んでいますが、まさにレモネード(LMND)にとっては格好の出番と言える状況ではないでしょうか。
タイミング良くモトリーフールに「3 Reasons Lemonade Could Make You Rich in 2021 (and Beyond)」のタイトルでレモネードのお勧め記事が掲載されていましたので、その骨子である、お勧めポイント3つをご紹介します。
データ重視のビジネス
レモネードは、従来の保険会社よりもはるかに多くのデータを収集し、そのデータを利用してビジネスを推進する人工知能を動かしており、これが同社の大きな強み。
AIチャットボットを使って保険の販売やクレーム処理を行うため、同社が必要とする代理店やアジャスター(=従来の保険会社で保険契約の販売やクレーム処理を行う人たち)の数が少なくて済む。レモネードでは顧客1,700人に1人の社員しかいないが、ライバル会社では通常、顧客150~450人に1人の社員が必要。
AIは、膨大な量のデータを活用して、保険契約の価格設定や保険金の支払いの際にリスクを定量化する。その結果、ロスレシオ(保険金で支払われる保険料の割合)が低下。2020年の損害率は71%と、損害保険市場の業界平均を下回っている。
ビジネスの規模が大きくなるにつれ、レモネードのデータ駆動型モデルは、競合他社よりも効率的(利益率が高い)になるはず。
喜びに満ちた顧客体験
デジタル戦略のもうひとつのメリットは顧客に優しいということ。AIチャットボットにより、顧客はわずか2分で保険を購入することができ、一方で同社は最短3秒で保険金を支払うことができる。さらに、このような自動化により経費が少なくて済むため、その価格はライバル会社よりも低いことが多い。
フレンドリーなユーザーエクスペリエンスを提供することに注力しているため、新しい顧客が急増し、創業からわずか4年後の2020年に顧客数は100万人を突破。これは、現在の市場をリードする既存企業の5倍から10倍の速さである。
今後、レモネードが新たな顧客を増やし、さらに多くのデータを収集していくことで、AIアルゴリズムはますます改良され、それは、より優れたアンダーライティングと不正検知、より効果的なマーケティング、より良い価格、そして時間の経過とともにより幸せな顧客体験をもたらすことになる。
これがフライホイール効果を生み、5兆ドル規模の保険市場でレモネードが地歩を固めることになる。
強力な成長戦略
レモネードの成長戦略は、「新規顧客の追加」「既存顧客のアップセル」「新商品の発売」「新地域への拡大」という4つの主要目標に焦点を当てている。
昨年の上場時には、米国の27州に加え、ドイツ、オランダで損害保険商品(賃借人、住宅所有者、コンドミニアム契約)のみを販売。その後、フランスへの進出、ペット保険や定期保険の追加などを経て、現在では全米50州で少なくとも1つの商品を提供している。
最新の決算説明会では、次の商品をすでに開発中であることを公表。具体的な内容は明らかにされなかったが、「これまでで最も重要な製品」になる可能性があるとのこと。
第4四半期の株主総会で経営陣は、複数の保険契約を持つ顧客の連続成長率は、単一の保険契約を持つ顧客の5倍であると説明。これは既存顧客のアップセルを効果的に行っていることを示しており、新しい保険商品の発売を続ける中でこの傾向はさらに強まるはずである。
モトリーフールの記事は最後に、競争の激しい業界ではまだ小さなビジネスであること。バークシャー・ハサウェイのような巨大なライバル企業(売上高の2倍強で取引されている)と比較すると、売上高の61倍というレモネードの評価は、とんでもなく割高であることを指摘してリスクを意識することを促しています。
それでも、レモネードは巨大な市場を破壊する可能性を秘めており、多くのディスラプター(破壊者)は、すべてのピースが揃うまでは過大評価のレッテルを貼られるものだと指摘。だからこそ、今日レモネードの株を数株買うことは、10年後に天才のように見られる結果をもたらすかもしれないと結んでいます。