レモネードに対する期待と不安

昨年12月初めにbeikoku-stock ポートフォリオに加えたレモネード(NYSE:LMND)。購入してまだ1ヶ月ちょっとですが、あまりの価格上昇に不安になって保有分の3分の2を先週売却しました。

めったにこんな短期での売買はしないのですが、実力に比してあまりにも株価が高すぎると判断しました。確信を持てるまでに至らない株にしては多めに買っていたので、保有を続けるには、もう少し身軽でいた方が精神的にも良いかなと考えた次第です。まあ、本音のところは、ちょっと怖くなったからですが。

160ドルで売って現在(1月15日終値)147.74ドルですから、短期的には成功って感じですが、もっと長いレンジで見たときにどうなるか。「あの時売らなかったら今ではいくらになっていた」なんてことは良くあることですから、特に大きく化ける株ですと。

3分の1残したのは、この株の将来に対する期待を持っているからです。でも、その一方で不安もまた抱えたままです。

期待

レモネードに関してはこれまで9本記事を書きました(こちら)。その中で彼らの特徴、評価されている点などを書いたのですが、いま魅力を感じているのは、収益力が伝統的な保険会社に比べて高いのではないかという点です。

従来の保険会社とは異なり、AIを使ったレモネードのビジネスは、ビッグデータを使用して、契約の引受や不正請求の検出を支援しています。

その結果、レモネードのリスク予測能力は時間の経過とともに向上し、従来の保険会社と比較して、より良いアンダーライティング(保険リスクを審査、引受または拒絶し、引き受けたリスクに対して適切な保険料を課すために分類すること)と低い損害率(保険請求に支払われた顧客保険料の割合)になると期待されます。

この期待が現実となっていることがうかがえるのが、ダニエル・シュライバーCEOが直近の決算説明会で明らかにしたこの数値。

記録されている中で最悪と言われる山火事、それに加えてハリケーンの季節でもあっために2020年第3四半期、米国の住宅保険会社は合計で100億ドルの災害によるカタストロフィ(CAT)損失を記録したそうです。

レモネードのアンダーライティングの能力が業界の平均的なものであれば、同社のCAT損失は約1,700万ドル(同社の市場シェアに基づく)になっていた計算になります。

これに対してレモネードが実際に記録したCAT損失は約425万ドル。75%も少なくて済んだのは、同社の優れたアンダーライティングによるものと推測できます。

さらに同社の損害率は72%でした。これは前年同期より6%の改善。業界平均よりも約10%良くなっています。

短期間の数字でこれが今後も続くのかは要ウォッチですが、これらの数値が示すレモネードの収益力の高さは今後大きな武器になると思われます。

不安

不安な点はたくさんあります。同業他社と比べると会社の規模がはるかに小さく経験も少ないこと。まだ利益をあげておらず、フリーキャッシュフローもプラスでないこと。そして売上高に比べてはるかに高い時価総額。これらの事実だけでも心をざわつかせるには十分です。

というわけで、レモネードの株価がマイナスに転じることを期待する向きも多くなっています。12月14日の時点でレモネードのフロート(売買可能な株式)の23%以上が空売りされていました。その後、株価は1月12日に188ドルまで上昇し、ショート・スクイーズとして知られているものを生み出しました。これは、空売り筋がショートポジションを解消するために株を買わざるを得なくなり、その過程で株価が上昇したことを意味しています。

特段ニュースがなくても、アナリストの評価や空売り筋の揺さぶりで株価が乱高下する。期待先行の銘柄にはありがちな動きは当面続きそうです。

保有継続

期待と不安の間で揺れながらそれでも当面は保有を続けようと思います。数兆円の規模を持つマーケットに破壊的なパワーで挑む新興企業。わずか4年余りで顧客が100万人を突破したことに示される成長力、そして収益力の高さはその斬新な戦略が機能しつつあることを示していると思うからです。

まあ、それでもちょっと不安の方が大きいです。今のところは。

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