2025年11月、ハイテク株の中で最もパフォーマンスが振るわなかった銘柄の一つとして名前が挙がったオラクル(ORCL)。現在の株価は200ドル近辺で推移していますが、ウォール街の見方は今、真っ二つに割れています。
今回は、2025年12月1日のマーケットウォッチの記事で報じられた最新のアナリスト評価を基に、同社の現状と将来性を分析します。
強気派の論拠:最悪のシナリオでも「底堅い」
ドイツ銀行のアナリスト、Brad Zelnick氏は、オラクルに対して非常に強気な姿勢を崩していません。同氏が提示した目標株価は375ドル。これは現在の株価水準から見て、実に約90%もの上昇余地があることを示唆しています。
この驚異的な数字の裏には、非常に興味深い分析があります。
Zelnick氏の分析で特筆すべきは、単なる成長期待だけでなく、「最悪のケース(Draconian scenario)」を想定している点です。仮に2026年度以降、AI関連の増収が完全にストップし、かつ契約済みリースの支払義務だけが半分残るという厳しい状況に陥ったとしても、2030年度にはEPS(1株当たり利益)で12ドル、フリーキャッシュフローで120億ドルを確保できると試算しています。
【分析】 この試算が示唆しているのは、「現在の株価(約200ドル)は、すでにかなり悲観的な未来を織り込みすぎているのではないか」という点です。オープンAIへのクラウドサービス提供という巨大なチャンスが「ゼロ評価」に近い状態であり、もし少しでも事業が軌道に乗れば、そこには大きなアップサイド(上値余地)が眠っていることになります。市場の恐怖が行き過ぎている今こそが、好機であるという見方ができます。
弱気派の懸念:無視できない「信用リスク」
一方で、手放しで喜べない現実も存在します。モルガン・スタンレーのLindsay Tyler氏は、株式の成長性よりも「企業の信用力(クレジット)」に警鐘を鳴らしています。
懸念の核心は「オープンAIに対するカウンターパーティリスク」と「明確な資金調達計画の欠如」です。
オラクルはAI需要に応えるために巨額の投資を行い、バランスシート(貸借対照表)を拡大させています。しかし、その投資の回収元となるオープンAIに万が一のことがあればどうなるかという懸念があります。また、ハイパースケーラー(巨大IT企業)による債券発行が相次ぐ中で、債券市場のセンチメントは変化しており、同社の負債に対する懸念が高まっています。
【分析】 株式投資家は「成長」を見ますが、債券投資家は「安全性」を見ます。現在、同社に対してクレジット(信用)面でのリスクが指摘されていることは軽視できません。どれほど素晴らしい技術や契約があっても、それを支える財務基盤が揺らげば、株価は上値を抑えられます。次の決算発表などで、経営陣が明確な資金調達プランを示せるかどうかが、この懸念を払拭する鍵となります。
総括:株式アナリストの多数派は「買い」だが…
ファクトセットのデータによれば、同社を追跡する45人のアナリストのうち、32人が「買い(Buy)」相当の評価を下しています。依然として多数派は強気です。
しかし、株価が200ドル付近で停滞している現状は、市場が「90%の上昇シナリオ(ドイツ銀行)」と「信用リスクの懸念(モルガン・スタンレー)」の間で揺れ動いていることを表しています。
結論として、オラクルは現在、ハイリスク・ハイリターンの「戦場(Battleground)」となっています。 もしあなたが、オープンAIとの提携によるAI事業の成功を信じ、かつ財務リスクは管理可能だと考えるなら、現在の下落局面は絶好の押し目買いのチャンスと言えます。一方で、負債や不透明な資金計画を嫌気するならば、会社側から明確なプランが提示されるまで静観するのが賢明な判断と考えられます。
情報源: MarketWatch: “Are Oracle bears too pessimistic? This analyst thinks the stock can rise 90%.” (Dec. 1, 2025)
※本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資は自己責任で行ってください。
*過去記事「オラクル急落の背景と「オープンAI一本足打法」のリスク・リワードを分析する」
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