レアアース大手のMPマテリアルズ(MP)の株価は、直近1か月で42%下落した一方、年初来では269%上昇しています。これほど激しい値動きが続く背景には、同社が中国との地政学リスクの影響を強く受ける事業を展開している状況があります。
中国がレアアースの輸出規制を示唆した10月初旬には株価が急騰し、その後、米中間の緊張がやわらいだことで押し戻されました。この動きから、レアアース市場が依然として中国の発言によって揺れやすい構造にあることが理解できます。
このような状況を踏まえると、MPマテリアルズが長期的に市場で評価されるためには、地政学リスクに強い事業モデルへ進化する必要があります。
国防総省が支援する企業という位置づけの重要性
バロンズが11月14日付けの記事“MP Materials Stock Gets Another Upgrade. The Outlook Is Bright.”で報じていますが、その報道で最も注目すべき事実は、米国防総省がMPマテリアルズと契約を結び、出資、価格下限、保証顧客という三つの保護策を提供した点です。この契約は米国がレアアース供給網を中国依存から脱却させるための戦略の一部であり、同社が国家的に重要な役割を担う企業へと位置づけられたことを意味します。
この契約により、次のような効果が生まれます。
価格下落局面でも収益を守りやすくなる
保証顧客の存在で売上の予見可能性が高まる
政府支援による長期的な事業安定性が向上する
さらに、報道によると、MPマテリアルズのEBITDA予測は2025年初の2億ドル未満から、2030年には10億ドル近くまで上方修正されています。この見通しの改善は、企業の収益力が明確に評価されつつあることを示しています。
アナリストの間で高まる強気評価の背景
アナリストによる強気評価が相次いでいます。J.P.モルガンのBill Peterson氏がMPマテリアルズを「ホールド」から「買い」に格上げし、ドイツ銀行のCorinne Blanchard氏も同様に格上げを行いました。ファクトセットによると、すでに81%のアナリストが同社株を買い評価としており、S&P500銘柄の平均55%を大きく上回っています。
アナリストの評価が強気に傾く理由として、以下の点が挙げられます。
国防総省の支援により事業の確実性が高まったこと
レアアース分野で米国が依存可能な企業が限られていること
地政学リスクが依然高い中でMPマテリアルズが重要性を増していること
特に、国家戦略上の要となる企業に位置づけられたことは、株価を中長期的に支える要因となりそうです。
ボラティリティは弱点ではなくテーマ性の反映
最近のMPマテリアルズの株価は日々大きく動いています。一見すると不安定に見えますが、レアアースという大きなテーマ性を抱えた銘柄においては、こうしたボラティリティは市場が将来性を真剣に織り込んでいる動きとも受け取れます。
短期的な株価変動よりも、レアアース供給網の再構築という長期テーマが進むかどうかが重要であり、MPマテリアルズはその中心に位置しています。
まとめ:MPマテリアルズは「国家戦略×レアアース」テーマの中心にある企業
今回の記事から、MPマテリアルズは次のような特徴を持つ企業だと考えています。
地政学リスクの中心にあるレアアース分野の主要企業であること
国防総省が支援する国家戦略上の重要企業であること
2030年に向けた利益成長の見通しが改善していること
アナリストの強気評価が急速に増えていること
短期的には大きく株価が動く場面がありますが、本質的には中長期の構造変化を背景にした成長が期待される企業です。レアアース供給の再編が続く中で、MPマテリアルズは今後も注目を集める存在です。
(出典:Barron’s “MP Materials Stock Gets Another Upgrade. The Outlook Is Bright.”Nov. 14, 2025)