オクロ株が上昇した意外な理由――「赤字拡大」でも市場が評価したポイント

  • 2025年11月13日
  • 2025年11月13日
  • BS余話

米次世代原子力スタートアップのオクロ(OKLO)が発表した第3四半期決算は、赤字幅の拡大という一見ネガティブな内容でした。しかし、株価は発表翌日の11月12日の米国市場で6.7%上昇し、110ドル台を回復しました。売上ゼロ、純損失2,970万ドルという数字にもかかわらず、市場が前向きに反応した背景には何があるのでしょうか。

(出典:Barron’s “Oklo’s Loss Got Bigger. Why the Stock Is Rising.” 2025年11月12日)


市場が注目したのは「損益」ではなく「道筋」

オクロの決算を支えたのは、短期的な収益ではなく、中長期の事業進展に対する評価です。
米エネルギー省(DOE)がアイダホ国立研究所(INL)の燃料製造施設に関する安全設計を承認したことは既報の通りですが、今回の報道ではさらに、Aurora-INL商業炉のDOE認可プロセスにも踏み込んだ動きが確認されました。

オクロは現在、原子力規制委員会(NRC)による商業ライセンス取得と並行して、DOEによる商業炉承認を進めています。これは商業運転へのリスクを軽減する重要なステップであり、短期の赤字よりも「長期の実現性」が評価された形です。


投資家心理を支える「実行フェーズへの移行」

同社は9月にINLで初の原子炉建設を開始しており、11月中旬に発破、来年1月に掘削を予定しています。これまでの「構想段階」から、具体的な建設工程に入ったことが投資家心理を支えています。

BofA証券は「燃料リスク軽減と規制進展で意味ある成果を上げた」と評価しつつも、レーティングは中立を維持。目標株価を111ドルに引き下げました。一方、シティ・リサーチは「商業運転が想定より遅れる可能性」を懸念し、68ドルの目標株価を提示しています。市場の評価が分かれる中でも、建設の進行が短期的な支えとなっている点は注目に値します。


「赤字でも上がる株」に共通する構造

売上ゼロ、赤字拡大、それでも株価が上昇する――この構図は、生成AIや電動車など「構造転換期にある産業」でしばしば見られる現象です。市場は短期の損益ではなく、将来のポジション取りを意識しています。

オクロの場合、AIデータセンターや電力逼迫問題を背景に、クリーンで安定した電源としての小型原子炉(SMR)への期待が膨らんでいます。株価の上昇は、「次世代インフラを担う企業」としてのストーリーが依然強く意識されている証拠といえるでしょう。


投資家への視点:次の焦点は「DOE実証炉の稼働」

今後の焦点は、DOEのReactor Pilot Programに選定されたAurora-INLが実際にどの段階まで進むかです。DOEの承認プロセスと商業ライセンスの取得が順調に進めば、2026~2027年にかけて商業化へのロードマップが明確になる可能性があります。

一方で、BofAやシティが指摘するように、製造コストや燃料リサイクル効率などの不確定要素が残っており、長期的な利益モデルの確立はまだ途上です。投資家は「進捗のスピード」と「技術の実証性」を冷静に見極める必要があります。


まとめ:ビジョンの現実化が次の試金石に

今回の決算で赤字は拡大したものの、市場はオクロの技術進展と規制承認の実績を重視しました。短期的には高いボラティリティが予想されますが、DOEとの連携が着実に進む限り、オクロは「次世代原子力」セクターの象徴的存在であり続ける可能性があります。

次回決算では、Auroraプロジェクトの具体的な進捗報告が、株価の方向性を左右する重要な要素となるでしょう。


*過去記事「次世代原子力オクロ、DOE承認で前進も赤字決算が重荷に

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