防衛AIの新星ビッグベアAI、急成長の裏にある「パランティア化」への道筋

  • 2025年11月13日
  • 2025年11月13日
  • BS余話

AIソフトウェア企業のビッグベアAI(BBAI)が、米国防省や政府機関向けの案件を中心に急速に存在感を強めています。2025年第3四半期には、売上3310万ドル、純利益250万ドルを計上し、2023年以来となる黒字を達成しました。前年同期比では売上が20%減少していますが、ウォール街予想を上回り、市場は好意的に反応しました。

株価は11月11日に6%上昇し、翌12日にもこの記事を執筆している時点で17%の続伸(米国東部時間11:00AM現在)。年初来で61%、過去1年で294%という驚異的な上昇率を記録しています。AI関連株の中でも特にボラティリティ(β値2.47)が高い点は注目すべきですが、政府との契約による安定収益基盤が形成されつつあることが市場の評価を支えています。


「Ask Sage」買収が意味するビジネス転換

ビッグベアAIは、決算発表と同時に防衛・国家安全保障機関向け生成AIプラットフォーム「Ask Sage」を2億5000万ドルで買収すると発表しました。このプラットフォームは16,000の政府チームを含む数百の組織で利用され、10万人超のユーザーを抱えています。創業は2023年と新しいながら、2025年には年間経常収益(ARR)が2500万ドルに達する見込みで、前年比6倍の成長を見込んでいます。

この買収により、ビッグベアAIはAIソフトウェア企業から「防衛データ企業」へと進化する可能性を持ちます。Ask Sageが蓄積する防衛・治安データを自社のAIモデルと統合できれば、意思決定支援システムの精度や即応性が飛躍的に向上するでしょう。

言い換えれば、これは単なるシェア拡大ではなく、「パランティア・モデル」への転換点です。


「ミニ・パランティア」としての戦略的ポジション

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は、米陸軍との10年間・100億ドル規模の契約をはじめ、国家防衛分野で圧倒的な地位を築いています。ビッグベアAIがこの領域に本格参入するには規模で勝負するのは難しいものの、特定領域に特化した小規模契約の獲得を積み重ねる戦略を採っています。

キャンター・フィッツジェラルドは、同社株に対する「オーバーウェイト」評価を維持し、目標株価を6ドルから7ドルへ引き上げました。これは防衛・国境警備・生体認証システムなどの案件を通じて、着実に新規契約が増加していることを反映しています。さらに、2026年FIFAワールドカップや2028年ロサンゼルス五輪の安全保障需要も、同社に追い風となる見込みです。


投資家にとっての課題とチャンス

ビッグベアAIの最大の課題は、売上成長が不安定である点です。2021年のSPAC上場以来、通期売上は増減を繰り返しており、2025年は上場後で最低水準になる見通しです。一方で、黒字転換とAI防衛分野への集中は、収益構造の転換期にあることを示唆しています。

株価変動が激しく(2025年だけで10%以上の値動きを示した日が33回)、短期的にはリスクが高いものの、長期的には「国家安全保障×AI」というテーマが中核となる市場にポジショニングしていることは確かな強みです。

「Ask Sage」買収が予定通り2026年第1四半期に完了すれば、AI防衛プラットフォームとしてのエコシステムが完成し、パランティアに次ぐ“第2の防衛AI企業”としての地位を固める可能性があります。


まとめ:防衛AIの成長軌道を握る「統合力」

今後の焦点は、買収したAsk Sageをどれだけ早く自社の分析・意思決定支援ツールと融合できるかにあります。政府契約の拡大に加え、2026〜2028年にかけて高まる国際イベント需要を取り込めば、短期的な売上減少を補う中期成長シナリオが描けます。

「AI×防衛」という構図の中で、ビッグベアAIは単なるパランティアの後追いではなく、より俊敏な中型プレイヤーとしての新しいポジションを確立しつつあります。


参考記事: Barron’s, “BigBear Stock Keeps Jumping After Defense Deal. It Could Be a Mini-Palantir.” (Nov 12, 2025)

*過去記事「パランティアに迫る?ビッグベアAIが防衛AIで急成長

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